親との同居を検討しているけれど、自分たちのプライバシーやライフスタイルは大切にしたいという悩みを抱える方に注目されるのが「完全分離型の二世帯住宅」です。
本記事では、完全分離型の二世帯住宅のメリットや間取りのポイント、さらには税金の軽減措置についてもわかりやすく解説します。
あなたの家族構成や将来設計に合わせた最適なプランを見つけるために、ぜひ参考にしてみてください。
完全分離型二世帯住宅とは、その名の通り、親世帯と子世帯がそれぞれ独立した空間を持ちながら同じ建物内で暮らす形態を指します。玄関やキッチン、バスルームなどの水回りをすべて分けることが多く、互いのプライバシーを守りつつ同居できる点が特徴です。
とりわけ親が高齢になってきた頃や、将来的に介護が必要になるかもしれないときに重宝されますが、お互いの生活リズムを尊重しやすいのも、大きなメリットといえるでしょう。
さらに子世帯にとっては小さな子どもの面倒を親に見てもらいやすく、親世帯にとっては日常的なサポートが受けられる安心感につながります。ただし、世帯ごとにスペースを完全に分けるため、光熱費や建設コストがかさむ可能性がある点には注意が必要です。
参考ページ:意外!?シニア世代がリフォームを決めた理由ベスト5 | リビングサーラ [くらすデザイン]
完全分離型の最大のメリットは、やはりお互いのプライバシーを確保しやすいことです。
玄関だけでなくキッチンや風呂場なども独立しているため、生活リズムが違っていても干渉し合わず、家族とはいえ適度な距離感を保てます。
また、今後家族構成が変化した場合や将来的に親が住まなくなった場合でも、一部を賃貸として利用できるなど、柔軟な資産活用が期待できる面も見逃せません。
一方、すべてを二重に設置することで初期費用が高くなりがちですし、光熱費の支払いも世帯ごとに管理するケースが多いため、手間が増える可能性があります。
さらに共有部分が少ないぶん、親子のコミュニケーションが不足しやすくなるリスクにも配慮が必要です。そうした点を踏まえ、自分たちの暮らし方や将来像に合った形式かどうかを慎重に見極めましょう。
二世帯住宅には完全分離型のほかにも、玄関や浴室など部分的に共用する「一部共用型」や、ほとんどの生活空間を二世帯で共用する「同居型」などのタイプがあります。
完全分離型と比べると、共用部分が多いほど建設コストを抑えやすい反面、プライバシー面では妥協が必要になる場合もあるでしょう。
二世帯住宅のタイプを表にまとめたものになります。
タイプ | 同居型 | 一部共用型 | 完全分離型 |
---|---|---|---|
共有範囲 | ・リビングやダイニング、キッチンなど、ほとんどの生活空間を共有。 ・基本的に同じスペースで生活する。 |
・玄関や水回りなど、一部の空間のみを共有。 ・リビングやキッチンなどはそれぞれ独立していることが多い。 |
・玄関からキッチン、リビングまで完全に分離。 ・それぞれが独立した生活空間を持つ。 |
メリット | ・家族と密にコミュニケーションをとりやすい。 ・親の介護が必要になった際も体調の変化などに気づきやすい。 ・いつでも家族の存在を身近に感じられる。 |
・設備や光熱費などをある程度節約できる。 ・一部を共有しつつも、個別のリビングやキッチンでプライバシーを確保しやすい。 ・家族の気配を感じられつつ生活ペースの違いにも配慮できる。 |
・完全にプライバシーを確保できる。 ・自分たちのライフスタイルを周囲に遠慮せず維持できる。 ・必要なときにすぐ駆けつけられる距離感を保ちやすい。 |
デメリット | ・プライバシーが保ちにくい。 ・常に同じ空間で生活するため、生活リズムの違いがストレスにつながりやすい。 |
・共有スペースの使い方や掃除・維持管理のルールが曖昧だとトラブルに発展しやすい。 ・同居型ほどではないが、ある程度の気配を意識する必要がある。 |
・建築コストや光熱費がそれぞれかかり、金銭的負担が大きい。 ・独立性が高い分、干渉が少なくなりすぎる場合もある。 |
注意点 | ・あらかじめ生活リズムや部屋の使い方について話し合う。 ・近すぎる距離感が苦手な場合は要検討。 |
・使用時間帯や共有ルールをしっかり決めておく。 ・トラブル防止のために定期的なコミュニケーションが必要。 |
・コスト面とプライバシー確保のバランスを検討する。 ・親との距離感を調整し、必要なときにサポートできる体制を整える。 |
二世帯住宅は、面積や構造の面でさまざまな税金も考慮に入れておく必要があります。
実は、二世帯住宅に適用される税金には一定の軽減措置が設けられており、建物の構造や家族の状況によっては大きく費用を削減できる可能性があります。
しかし、どの制度にも細かい要件が定められており、建物面積や耐震基準、着工時期などが適合していないと適用されない場合があります。そのため、自治体の公式サイトをはじめ、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家から最新情報を得ることが大切です。
ここからは、不動産取得税や固定資産税、住宅ローン控除、相続税といった代表的な税金の軽減措置について紹介します。
参考ページ:住宅リフォームで減税になる!? | リビングサーラ [くらすデザイン]
不動産取得税は、土地や建物を取得したときに都道府県から課される税金です。
ただし、「50㎡以上240㎡以下の床面積」を新築した場合、最大で1200万円の控除を受けることができます。完全分離型二世帯住宅を建てる際、それぞれの世帯の独立性が認められれば、2倍の2400万円の控除を受けられる可能性があります。
不動産を所有している限り毎年課されるのが固定資産税です。
新築住宅については、床面積が120平方メートルまでの部分に関して3年間(長期優良住宅などは5年間)、固定資産税が1/2に減額されます。
完全分離型二世帯住宅を建てる際、登記上の扱いや構造によって「二つの住宅」と判定されるとそれぞれの住戸に対して床面積120平方メートルを上限に軽減措置を受けられる可能性もあります。
住宅ローン控除は、一定の要件を満たす住宅を取得し、金融機関等からローンを組んだ場合に、借入残高に応じて所得税や住民税が控除される制度です。控除期間は13年など一定期間続くものもあります。完全分離型二世帯住宅の場合、共有登記や区分登記にしておくと、双方の世帯がそれぞれの住宅ローン控除を受けられるようになります。
相続税とは、相続等により財産を取得した場合に、その取得した財産に課される税金です。
親世帯の資産を将来的に相続する際、建物や土地が二世帯住宅であることが相続税の節税につながる場合があります。代表的な制度としては「小規模宅地等の特例」があり、一定の要件を満たすことで最大330平方メートルまでの宅地が80%減額されることが可能です。
ただし、完全分離型二世帯住宅を相続する場合は、区分登記ではこの特例が使えず、あくまで共有登記の場合のみ適用されます。
二世帯住宅の間取りには、家族が快適に暮らしつつ、プライバシーや独立性を確保できるよう工夫されたタイプがいくつかあります。
主に「縦割りタイプ(左右分離型)」と「横割りタイプ(上下分離型)」の2つの基本的な間取りが存在し、それぞれの特徴と利点を理解することは、家づくりにおいて非常に重要です。どちらのタイプが自分たちのライフスタイルに適しているのかを考慮して、選ぶことで、より充実した生活を送ることができます。
縦割りタイプは文字どおり、建物を左右に分割して世帯同士が隣り合うように暮らすイメージです。また、世帯間で上階の騒音や振動にストレスを感じることも少ないです。
また、左右でまったく異なる内装デザインを取り入れることも可能なので、好みや生活様式の違う家族同士でもお互いの個性を活かしやすい点が魅力です。ただし、どうしても横方向のスペースが必要になるため、そもそも敷地の幅が十分に確保できないと設計そのものが制限されてしまいます。
横割りタイプは、いわゆる上下階で住み分けるスタイルです。
一階と二階をそれぞれ別々の世帯が使うため、場合によってはエレベーターを設置しない限りは日常の行き来が水平移動より少し負担になるかもしれませんが、そのぶん親世帯は一階部分をバリアフリーにしやすく、高齢の家族にとって生活しやすい動線を確保しやすいという利点があります。
また、建物が上下で分けられているため、階下への音漏れや振動に配慮する必要があります。
完全分離型は、親世帯と子世帯がそれぞれ独立した生活を送りながらも、近距離でお互いをサポートできるという利点があります。
ただし、物理的に分離されているぶん、それぞれが自立しているとはいえどこかで協調し合う姿勢が求められます。
ここでは、完全分離型を選んだ際に成功するためのポイントを紹介します。
別々に暮らしているからこそ、どのタイミングで声をかけ合うか、どんなときに互いの部屋を訪問してもよいかといった細かなルールを事前に話し合っておくことは大切です。同居ではないため親の存在を近くに感じにくくなる反面、もし体調不良や何かあったときは緊急で駆けつける必要があるかもしれません。
いざというときの連絡手段や優先度などを取り決めておくことで、互いに安心して暮らすことができるでしょう。
光熱費やインターネット回線など、完全分離であっても共用する設備がある場合、どの程度のコストをどちらが負担するのかを明確にしておく必要があります。
例えば、水道や電気を分けて契約しているのか、それとも親世帯と子世帯で共通のメーターを使っているのかによって、請求の形態は大きく変わってきます。後になって「どちらがどれだけ払うべきかわからない」というトラブルに発展しないよう、建築前の段階から話し合いを重ねておくことが理想的です。
親世帯はバリアフリーや段差のないフロアなどを求めることが多いかもしれませんが、子世帯は子どもを育てるうえでの安全面や、友人を呼んだり、在宅ワークをするためのスペースを希望したりすることもあります。
完全分離型だからこそ、それぞれの間取りや設備を自由に考えられる利点がありますが、その一方で共有部分の有無や建築コストの問題も出てきます。家族の将来設計を見据えながら、お互いが遠慮せず正直な希望を出し合うことが成功の第一歩です。
完全分離型は、親が高齢になったときの介護や、子どもが独立した後の住み替えなど、時間の経過による変化にも柔軟に対応しやすいところが魅力です。
しかし、それも最初の設計段階で将来像をしっかりイメージしておかなければ、必要な改築やリフォームがかさんでしまうリスクがあります。
部屋の広さや設備の位置取りなどはもちろん、エレベーターの設置スペースを確保しておくかどうかなど、長期的な視点で考えておくと、家族全員がより安心して暮らせる二世帯住宅になります。
新築ではなく、いま住んでいる家を改装して完全分離型へと変えたいというニーズも多く存在します。築年数の長い住宅では、耐震性や断熱性能をアップする工事も同時に求められるため、思った以上に大がかりなリフォームになるケースもあります。
家族構成の変化や将来的な介護を見据え、「どの程度のリノベーションで、理想の二世帯空間を実現できるか」を計画段階でしっかり検討することが重要です。
ここからは施工ポイントや施工費用や期間について、紹介します。
完全分離型にするうえで最初に検討すべきは、玄関やキッチン、トイレ、お風呂といった生活の要となる空間をどのように分けるかです。それらをすべて増設すると、配管や電気配線を見直す必要があり、壁や床を開けて大規模な工事に発展する場合も珍しくありません。
さらに防音対策として壁に吸音材を入れたり、床に防振対策を施したりすることで、お互いの生活音を抑える工夫も必要になることがあります。
また、古い建物ではリフォーム時に耐震補強を行うのが望ましく、事前の調査と見積もりが欠かせません。
リフォーム費用は改装範囲や住宅の状態によって大きく変動しますが、完全分離型にするとなると数百万円以上の予算が必要になる可能性があります。玄関や水回りを増設する場合、配管工事や電気配線の手間がかさむためコストが上昇しがちです。
工期については、間取り変更を伴う場合であれば数ヶ月から半年ほどかかるのが一般的で、その間の生活スペースをどう確保するかも大切な検討事項です。
自治体によっては、高齢者向けバリアフリー改修に補助金を出していることもあるため、国や地方公共団体の制度を早めに調べておくとよいでしょう。
くらすデザインでの二世帯住宅の事例をいくつかご紹介します。
お子さんの小学校入学を機に住まいを検討し始めたKさん。ご両親からの同居の提案を受け、実家を完全分離型の二世帯住宅に改修しました。玄関と水回りを分け、中央の階段を移動することで、親世帯と子世帯が上下階で独立した生活を送れるように。内部には行き来できる扉も設け、それぞれの世帯が程よい距離感を保ちながら暮らせる住まいが完成しました。
お子さんの進学とお父様の介護のため、Kさんご夫婦は実家をバリアフリーで手入れしやすい二世帯住宅にリフォーム。既存トイレを分け、玄関・浴室・LDKは共有。対面キッチンで収納を増やし、銘木の天井はシュークロークに、カウンターはリビングテーブルに再生。段差解消とソフトクローズ建具で安全性を高め、お母様も安心して暮らせる住まいが完成しました。
完全分離型の二世帯住宅には、互いのプライバシーを守りつつ、家族構成の変化にも柔軟に対応できるといった多くの魅力があります。
一方で、税金やコストなど想定外の出費が発生するなどの可能性もあるため、初期段階から情報収集をしっかり行い、家族間で将来の暮らし方を丁寧に話し合うことが大切です。
具体的なリフォームプランのイメージが湧いたら、専門家への相談を検討してみてはいかがでしょうか。
リビングサーラでは、二世帯住宅を数多く手掛けてきた実績があり、建築士資格を有する営業スタッフがお客様の困りごとや夢をしっかりヒアリングする体制を整えています。
来店だけでなく、Web相談会も開催していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
あなたとご家族が長く快適に暮らせる二世帯生活を、一緒にスタートしましょう!